天使と狼少年の寓話

1/1

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

天使と狼少年の寓話

      ある時天使が現れて言った訳さ、     あんたの涙と引き換えに 何でも一つ願いを叶えてやろう     まだ僕が狼少年と呼ばれる ずっと前の話だけどね   天使は続けて言った     ただし そのための涙は結構な量がいるから 何年かかるかわかりゃしない   願いを決められるのは 今この場で一回こっきり   変更は効かないよ   もしもあんたの涙が溜まるより先に 願いが叶ったとしても こちらは一切関知しない   それでもあんな、 契約するって言うのかい?     ああ勿論 僕は笑顔で頷いた   満面の笑みってやつさ     構わないのさ 僕の願いは 何だか難しそうで 時間がかかりそうだったから   渡りに船と飛び付いただけで   別に僕が笑おうが泣こうが   勝手に叶ってくれたら 有り難いことこの上ない   僕は言った     あの人が 少しでも自分を好きになれますように   誰よりも自分が嫌いで 誰よりも自分が大切 と言ったあの人が   ほんの少しでも自分を好きになってくれたらと   天使はいいだろうと 哄って頷いた     僕が狼少年になる ずっとずっと昔のお話   さァて すっかり聞いちまったそこのアナタ   どうします? 僕の笑顔の貰い手に なっちゃくれませんか?   ああ、まかり間違っても あの人に笑顔を押し売りすればいいなんて 言ってくれるな   そんな涙と引き換えに 押し付けられたようなモノでなくて   心から笑って欲しいんだ   自分と皆を愛していると 愛しさに溢れた笑顔を望んでいるんだ   おや、ちょいと失策 この物言いじゃあ 売れる商品も売れないってもんか   そいじゃ、 僕はまた涙ながらの ほら吹き道中に戻るとするよ   さっきの話だけどね 何ッから何処まで信じるか アナタの自由だよ?   なんせ僕は悪名高き狼少年ですから(笑
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加