第2話 始まり

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もし口にしていたら、奴に殺される。 そのことを確信したからだ。 『ソイツ』は俺を喰うことしか頭にないように、舌なめずりをする。 …動けない。 一歩でも動けば、奴は飛びかかってくるだろう。 “先に動いてはいけない” 脳から走るこの命令が、体の動きを封じていた。 ―そうだ、奴の動きを見ろ。 奴の動きを理解し、それを考えながら逃げる。 それが、この場で投じるべき最善の一手だ。 …と、その思考は中断された。 「グォアアアア!!」 獣が叫ぶ。 その背後には、人間が立っていた。 白銀に閃く甲冑と、それ以上に輝く剣。 その姿は軽装であるものの、まさに『騎士』であった。 「ウルァアアア!!」 獣が振り返り様に唸る。 体勢を低くし、飛びかからんと構えた。 「…。」 騎士は、手にした細身の剣を構えた。 そしてジリジリと距離を詰めたかと思いきや、一気に間合いを縮めて斬りかかった。 「グォォオオオオ!!」 紙一重でかわした獣の脇腹が斬れていた。 しかし、そこから血は出ていない。 「フ…」 騎士は負傷し動きが鈍った獣の正面に回り込むと、高く掲げた剣を獣の額に突き刺した。
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