第2話 始まり

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冗談混じりに呟いてみたが、案外マジかもしれない。 さっきから何か息苦しいし、足の裏に感じる土の感触も、普段触れているそれとは違うような気がするからだ。 「…オイ!誰かいねぇのか!?いたら返事してくれ!!」 一瞬よぎった不安感を払うように、俺は叫んだ。 だが、その声は虚しく響くだけだった。 「…ちっ。」 返答がない叫びと足の裏に走る激痛、そして息苦しさのせいか、俺はついに座り込んでいた。 服の袖を引きちぎり、足から滴る血を止血する。 部屋着がもったいないが、仕方がない。 …と、その時であった。 「「ガラッ」」 誰もいないはずの岩壁、その上から音が響くと共に、俺は『何か』の気配を感じた。 「!?」 とっさに音のした方を睨みつけ、立ち上がる。 「ウゥゥゥゥ…」 …岩壁の上に、『ソイツ』はいた。 犬?狼?ハイエナ? …いや、違う。 殺気を感じさせる程に血走った一対の瞳。 数多のものを喰らってきた事を物語る鋭い牙。 凄まじい素早さを誇るような強靭な四つの脚。 それを携えた一匹の獣が、岩壁の上から俺を睨んでいた。 「…な」 『なんだ、アイツは』。 俺はその言葉を発することさえ出来なかった。
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