35人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
夜の帳が落ちた街に、人影が交錯する。
否、それは人影だけに非ず。
中には醜悪な形をした化け物の姿もある
化け物達は轟音を撒き散らしながら市街の空を駆ける。
そんな中、音源から離れる影がある。大きなカナブンのような形をした化け物だ。
「くそっ!聞いてないぞ!」
化け物の上に乗っている人物が叫ぶ。
顔を覆う大きなゴーグルで性別が解りにくいが、声を聞く限りには男だと推測出来る。
「今回の任務は新たに生まれた虫憑きの捕獲の筈だろっ!?」
ヒステリックに叫ぶ男の耳元から、ノイズの音に紛れて悲痛な声が流れた。
「……っ!?"空蝉"までやられた!?」
余程ショックだったようで、轟音が止んだ事に今になって気付く。
「…………」
先程の轟音が嘘のような無音。
今男の耳に入る音は自分の歯から出るガチガチと言う音だけだった。
「…………」
最初のコメントを投稿しよう!