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満月の夜。
和服姿の可憐な少女は淋しそうに月を見上げていた。
「今宵は満月。もう誰も私を引き止めることは出来ない」
静かに姿を現し、少女を見つめる老夫婦。
「本当に行ってしまうのか、かぐや姫」
「行かないでおくれ」
二人とも泣きながら引き止めるが、かぐや姫は小さく首を振る。
「おじいさん、おばあさん。わたくしはこの世界の人間ではありません。
だからこのままこの世界に住むわけにはいかないのです」
「かぐや姫!」
二人が必死に止めるが、かぐや姫の決意は固く、揺るぐ様子はなかった。
「おじいさん、おばあさん。長い間お世話になりました。
今夜のように月のきれいな夜は、空を見て私を思い出してください」
「ああ、思い出すとも」
「決して忘れないよ」
かぐや姫の決意に、二人も見送ることを心に決めた。
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