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葵衣はすぐに店を出た。
俺は思わず
「店長!今日少し早めに上がったらダメっすか?」
シフト上、残る時間はあと30分はあった。無理かも、とは思っていたら、店長はすんなりOKを出してくれた。
俺は慌てて着替えた。
―帰ってしまうその前に…!
急いで駐車場へ行くと、まだ葵衣の車にはエンジンがかかっていない。
近づき、中を覗くと葵衣は下を向いていた。相変わらずお腹に手をあてている。
窓を軽く叩くと、葵衣は顔を上げた。
目と額が赤くなっていた。近くには薬の袋が見えた。
―産婦人科…?
「よっ、思い出した?」
できるだけ、さりげなく話しかける。葵衣は
「わかんない…教えて?」
―入学式に続き、学祭のことも覚えてないなんて…
でもそれは逆に好都合かも…
俺はチョコレートを渡し、葵衣のひとつひとつの行動を見つめた。
―やっぱかわいい…
世間一般でいうなら、普通かもしれないが、赤くなり潤んだ目も…やわらかそうな唇も…白い肌も…相変わらずサラサラな髪も…全部がかわいかった。額が赤い理由はわからなかったが。
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