再会

6/7
717人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
葵衣はすぐに店を出た。 俺は思わず 「店長!今日少し早めに上がったらダメっすか?」 シフト上、残る時間はあと30分はあった。無理かも、とは思っていたら、店長はすんなりOKを出してくれた。 俺は慌てて着替えた。 ―帰ってしまうその前に…! 急いで駐車場へ行くと、まだ葵衣の車にはエンジンがかかっていない。 近づき、中を覗くと葵衣は下を向いていた。相変わらずお腹に手をあてている。 窓を軽く叩くと、葵衣は顔を上げた。 目と額が赤くなっていた。近くには薬の袋が見えた。 ―産婦人科…? 「よっ、思い出した?」 できるだけ、さりげなく話しかける。葵衣は 「わかんない…教えて?」 ―入学式に続き、学祭のことも覚えてないなんて… でもそれは逆に好都合かも… 俺はチョコレートを渡し、葵衣のひとつひとつの行動を見つめた。 ―やっぱかわいい… 世間一般でいうなら、普通かもしれないが、赤くなり潤んだ目も…やわらかそうな唇も…白い肌も…相変わらずサラサラな髪も…全部がかわいかった。額が赤い理由はわからなかったが。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!