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「このクレープおいしいですよ…」
葵衣はクレープを指差したまま、テーブルに額を付けた。
―…寝た?!
俺が葵衣に話しかけようとした時
「大鳥~しっかり仕事したのかよ。もう時間だから交代」
葵衣の肩に軽く触れ、薫にも交代の合図をする。
―…交代?
話の展開についていけず、キョロキョロしている俺に薫が
「愚痴ってたでしょ?悪気ないから許して下さいね。じゃ番長、あとよろしく!私、葵衣送ってくから」
番長と言われた人は、さっき葵衣の肩に触れた奴だ。もうすでに店の中に入っている。どうやらここは交代制で売ってるらしい。
「番長って言うな!」
薫は番長に手を振り、俺に視線を戻す。
「せっかくだからクレープ食べて下さい。ほら葵衣!帰るよ!」
促された俺は頷くしかなかった。葵衣は、うなりながら、なんとか立ち上がり薫とともに帰って行った。
―…俺の勝負…
………玉砕か?!………
学祭も終盤に差し掛かり、人も徐々に少なくなってきていた。
俺は帰ることもできずにグラウンド前のベンチに座っていた。
「少年!その調子ならフラれたか?…ビンゴ…?」
隣に座りながら、話しかけてきた小出にちらっと視線を移した後、またグラウンドに戻す。
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