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「ちょっ、ちょっと待って?」
俺はコーヒーをぐびっと飲み、改めて小出と香奈を見る。
「俺にも都合が…」
「…やっぱ無理か…」
小出が肩を落とす。香奈は泣きそうな顔だ。
―勘弁してくれ…。確かに小出に世話にはなってるが…
「俺の部屋がバレるのは避けたい…香奈ちゃんの部屋はどこ?実家とかには戻れない理由があるの?」
色々な思いが巡ったが、最終的に俺は彼氏役を受けることにした。
俺1人でいるより寂しさが紛れるだろう。
小出にいつも世話になっている。
かなわない片思いも諦める時がきたんだ。
そんな思いだった。
香奈は
「実家は…県外なんです…。今、大学に行ってるから、実家には戻れなくて。私の部屋はここから駅2つ分のところです」
最初の頃より、声に覇気が出た香奈は俺の質問に答えた。小出は頭を下げて、ありがとうと言い続けた。
こうして俺の彼氏役は始まった。
確かに香奈は美人だ。ストーカーになる奴がいても、おかしくない。
俺に何ができるわけでもないと思ったが、とりあえず簡単に荷物をまとめ、香奈の部屋に住むことになった。
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