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「なんとか大学費用も納めた。あとは彼女だけかぁ~」
だらしなく、背伸びをしながら床に寝転ぶ。俺は榊 真介(サカキ シンスケ)。大学ももう最後の年。つまり4年生だが、ハマれる彼女がいない。
「言ってくる相手はいるんだけど…」
独り暮らしは独り言が増える。起き上がり、テーブルの上に置いた缶ビールを飲む。
大学になって告白される回数は前より増えた。気がむいた時、とりあえず付き合ってみるが、しっくり来ない。
「やっぱりあいつじゃないと」
テーブルには、空になった缶が並ぶ。今日のつまみは、鶏肉と野菜の中華風炒め。もう独り暮らしは5年以上…高校の時からだから、料理も自然とうまくなった。興味があったという理由もある。
携帯が何かを知らせる。着信音が嫌で、いつもマナーモードだ。
【しんちゃん、今日暇~?】
―メールか。マユ?えっと…誰だったかな?やべぇ、顔が思い出せない
返信する気になれず、そのまま携帯をテーブルに置く。
俺はあいつ、こと葵衣(アオイ)との出会いを思い出していた。
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