余命宣告

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眠れなかった。でも考える時間はその分あった。 先生は朝から病室に来た。 「眠れなかったようですね」 俺は黙っていた。 「治療を選ばない人も多くいます。幸い、今はまだ症状も軽いですので、君の意思が決まり次第、退院かどうかを決めたいと思います」 そう話した後、病室を出ていった。 「先生!」 俺は、廊下を歩いている先生を引きとめにいった。 「…俺は治療はしない。病院が嫌いなんだ…。俺は…病院じゃないところで死にたい」 俺の言葉に少し驚いた様子だったが、すぐに真剣な顔になり 「わかりました…。しかしまだ時間はあります。気持ちが変わったら、いつでも治療の説明はできますから」 「…はい」 俺の返事に頷いた先生は、また廊下を歩き出した。 その日、先生の言う通り、退院できた。 薬や苦しくなった時に使うという吸入を処方されたが、使う気はなかった。しかし捨てるのは勿体無く、そのまま部屋に持ち帰った。
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