718人が本棚に入れています
本棚に追加
眠れなかった。でも考える時間はその分あった。
先生は朝から病室に来た。
「眠れなかったようですね」
俺は黙っていた。
「治療を選ばない人も多くいます。幸い、今はまだ症状も軽いですので、君の意思が決まり次第、退院かどうかを決めたいと思います」
そう話した後、病室を出ていった。
「先生!」
俺は、廊下を歩いている先生を引きとめにいった。
「…俺は治療はしない。病院が嫌いなんだ…。俺は…病院じゃないところで死にたい」
俺の言葉に少し驚いた様子だったが、すぐに真剣な顔になり
「わかりました…。しかしまだ時間はあります。気持ちが変わったら、いつでも治療の説明はできますから」
「…はい」
俺の返事に頷いた先生は、また廊下を歩き出した。
その日、先生の言う通り、退院できた。
薬や苦しくなった時に使うという吸入を処方されたが、使う気はなかった。しかし捨てるのは勿体無く、そのまま部屋に持ち帰った。
最初のコメントを投稿しよう!