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追試を受けなかったことで留年が決まり、大学から電話が随分あっていた。だが、俺は出なかった。
―このままだと退学かもなぁ…
そして小出から着信に気づく。電話に出ると
『留年して大丈夫かよ、お前何かあったのか?』
「何もないよ、就職決まってないしな。またやり直しってとこだよ」
『それにしたって…何かあったんだろ?本当に大丈夫かよ?』
相当心配している小出に申し訳なかった。だが俺は病気のことは言うつもりはなく
「留年くらい、大丈夫だよ」
そう言って電話を切った。更衣室から事務所に出ると店長がいた。目が合うと口を開いたのは店長だった。
「留年したのか」
「あ、はぁ…」
やばい内容を聞かれた。俺にとっては親父みたいな存在の店長だ。怒られるだろう…、そう覚悟していると
「まぁあと1年頑張れや」
そう言って店内へ出て行った。予想に反して拍子抜けしたが、とりあえず店長の後を追い、俺も店に出た。
店には暖かな日差しが差し込んでいて、もうすぐ春が来ることを教えているようだった。
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