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あっという間に卒業式がきた。
その日、小出は店に遊びに来てくれた。
「おめでとう、小出」
「お前、それよりこれ見ろよ!」
小出は興奮しながら、携帯の画面を俺に見せた。
―!!
「撮ったぜ~!いるなら、携帯に送ってやる」
「い、いる!くれ!」
「やっぱりなぁ…。お前も一緒に卒業できればよかったのに…」
「そう言うなよ、今からじゃ遅いんだから」
落ち着いているように話したつもりだが、胸の高鳴りは止まらなかった。小出が俺に見せた写メは袴姿の葵衣だった。
―抱き締めたい…
無情にも興奮してしまった自分に気付き、少し恥ずかしくなった。
―こんなに好きなのは…なぜなんだろう
自分でも不思議だった。
小出は、ひとしきり騒いだ後、飲みに行ってくると言って店を出ていった。
葵衣の写メを待ち受けにはしなかったが、それから毎日携帯を見ていた。
―俺って、ある意味…ストーカー?!
そんなある日、いつものようにバイトをしていると、1台の四駆が駐車場に入ってきたのが見えた。客なら、すぐに入ってくるだろうと思ったが、それ以上の動きがない。いつもは気にしない俺が、その時は運転手を見た。
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