717人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
―――入学式
新入生とサークル勧誘の人たちで、ごったがえしている。
―だりぃなぁ…誰も俺に話しかけないでくれ
高校からこの大学への進学は、俺ひとりだ。もちろん知っている奴はいない。
「早く帰ろ~っと。バイト行かなきゃ」
独り言を呟いた時、隣から声がする。
「私も早く帰りたいんだ、一緒に出よう?」
警戒心むき出しにして、声のする方を見る。
―……!!
「…あ、誰か友達いる?ごめんなさい」
セミロングのサラサラな髪が春の風に優しくなびく。白い肌が、チャコールグレーと水色のシャツで際立つ。顔が小さく、細身の体型は目をパッチリに見せている気がした。
「あ、いや。今から帰るけど…」
やっと出た言葉に、相手は少し照れたように笑いながら
「いきなりごめんなさい。私誰も知ってる人いないの…勧誘とか誰か一緒だと、すり抜けられるかなって」
顔の前に手を合わせ、謝ってくる。まったく悪い気はしない。
「いいよ。俺も1人だし」
最初のコメントを投稿しよう!