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後部座席にはボストンバックが見えた。
「旅行行くの?体調悪そうなのに」
俺の言葉に、葵衣は驚いていた。
―薬飲むくらいだ。なぜそんなに驚く…?言った内容がヤバかったのか?
葵衣は頷く。随分駐車場から動いていないのを考えると、誰とも待ち合わせしていないことに察しがつく。ついそのことを言うと、葵衣はまた泣きそうな顔になり、お腹を押さえている。
―やべ、地雷踏んだ?!とにかく…ここから動かなきゃ店長にバレバレだよ
運転を変わると伝えると、素直に葵衣は運転席を譲った。
―こんなに近くに葵衣がいる…
でもさっきから押さえているお腹は…痛いのか?
長い間、泣いていたみたいだが…彼氏と何かあったのか?
聞きたいことは、山ほどあった。でも今は葵衣との時間が貴重で、壊したくない気持ちもあった。
1人の旅なら、俺が同行するわけにはいかないだろうか。そんな思いを巡らせていると、知らず知らず自分の部屋への帰り道を走っていた。
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