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「何が怒るな、よ!私は昨日、前の彼女がいいってフラれたのよ!!」
言い終えた葵衣は肩で息をしていた。
―え、マジ?別れた?
…でも元カノがいい、だなんて…そりゃ泣くわ…
嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが複雑に絡まっていた。
葵衣につらいことを言わせた、お詫びといっては…合わないかもしれないが、病気のことを話そうと決めた。
ちょうど車は、夜景がきれいな場所まで来ていた。そこに車を止めた。
数年のいのちということがわかり、居場所が欲しい為に追試をうけなかったこと、香奈にも付き合いは断ったことを話した。
葵衣は黙って聞いてくれた。
―俺は余命数年の奴なのに…葵衣と強引に旅行だなんて…
…葵衣はきっと気を遣う
葵衣といたい気持ちを押し付けて結果なんて考えてなかった…
気づいたら涙が出ていた。
それでも葵衣は黙って聞いてくれていた。
俺は葵衣の反応に嬉しさも感じたが、少しいじめたくもなり、学祭で玉砕した話をした。
葵衣は覚えてないし、やっぱり思い出す様子もなかった。
―俺の勝負は…。逆にいじめられてる気分
多少はへこんだが、今隣に葵衣がいる。それだけで、もう許せた。
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