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葵衣は田辺の嫁さんである晴海(ハルミ)に会って、妊娠しているお腹に触った瞬間、涙を流した。
「おい、葵衣ちゃんって…」
「なんだよ」
俺は田辺とベランダで昼間から飲んでいた。田辺と晴海とは中学・高校と同じだ。田辺たちは卒業と同時に結婚し、ここでペンションを経営している。
「病気のこと知ってんのか?」
「うん…まだ具体的には話してないけど」
「なんであの時泣いたと思う?」
俺を覗きこむ姿勢をとる田辺に対し、俺はつい怪訝な顔をしてしまう。
「どういう意味だよ」
「俺の思い違いかもしれないんだけど…晴海と同じかもしれない」
晴海は田辺と付き合う前に…高校の時に付き合ってた奴の子供を妊娠して…おろしている。その後、田辺と付き合い、俺は田辺の相談にのっていた。
―まさか葵衣が…
でもお腹を守るしぐさ
産婦人科の薬
確かに可能性はあり得る…
「葵衣ちゃんはお前のこと、悪いようには思ってない。お前が支えてやれれば…」
田辺は言葉に詰まる。理由はすぐにわかった。
「あと数年、だもんな」
「なんでお前がそんな…」
田辺は頭を抱える。
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