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「そんな風に言うなよ…仕方ない」
「……どうするんだ?」
田辺が聞きたいことはわかっていた。だが、その答えはまだ俺の中でも出ていない。
「わかんね…でも一緒にいたい、あんなに好きだと思える奴は初めてだから…離したくない…でも…」
ビールをくいっと飲む。田辺は頭をかきむしる。
「そんな巡り合わせって…」
田辺が言いかけたその時、ランチの用意ができたと晴海が声をかけてきた。
田辺たちは気を遣って、葵衣が楽しめるように配慮してくれた。晴海を除く3人は、ほどよく酔いがまわり、今までのもやもやした気分を取っ払ってくれた。
葵衣の笑顔は、作り笑いではなかった。
―その笑顔をずっと見ていたい
俺と葵衣は、田辺に教えてもらった湖へ散歩することにした。
湖の前まで来た俺は、酒の力もあって解放的にもなっていた。知っていながら、あえてそれを抑制しなかった。
ベンチに座るよう促すと、葵衣はすぐに隣に座った。爽やかなシャンプーの香りがした。
「また、大鳥と来られたらいいなぁ」
今なら素直に言える気がした。
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