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「ちょっと~榊くん!昨日の準備も出ないで、今日もどっか行くの~?」
「俺、トイレ~!」
最後の学祭ともあって、学年やクラスでの出店を余儀なくされ、俺のとこはたこ焼きらしい。
昨日はバイトだったし、今日は葵衣を探す為に時間を使いたかった。
「榊~、見つけたぜ!」
キョロキョロしながら歩いていると、突然肩に手をまわし、話しかけてくる。
「小出~!何、見つかった?!てか、相変わらずチャラチャラしてんな」
茶髪に軽くパーマをかけ、シルバーのリングやチェーンをつけているが、数が半端じゃない。
「チャラチャラって言うな。もう教えないからな!」
肩から手を離そうとする小出を俺は慌てて引き留める。
「待て!頼む!教えてくれ…」
「しかしお前がそんな一途だったとはなぁ。これまでの女たちは可哀想だ」
―プライドや恥なんて、もう関係ない…
「……。で、どこなんだ?」
「中庭のクレープ屋だ」
そう言い終わるか否かのタイミングで、俺の顔の前に手を出す。
「報酬」
「…これで勘弁!じゃまたな~」
差し出された手の上にタバコを1カートン置く。小出の反応も見ないまま。
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