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中庭に向かう途中、頭の中は複雑だった。
―確かに今まで付き合ってきた人たちに悪いな…
申し訳ない気持ちが大きくなる。付き合ったと言えるのかどうか、という関係もある。
俺は立ち止まり、頭を抱える。
―気持ちを切り替えないと!
再び中庭に向かう。足取りはあまりよくない。
―覚えてないだろうな…
見つけたクレープ屋の前には座って食べられるように簡易式のテーブルとイスが2セット用意してある。
―なんかドキドキする
久々のドキドキ感に違和感を感じながら、店の前に立つ。
「いらっしゃいませ~」
「あ。1コ」
笑顔でむかえた人は葵衣ではない。がっかりしながら、とりあえずクレープを頼む。店に背を向け、空を見上げていると
「ちょっと葵衣。いい加減、手伝ってよ」
アオイという言葉に、いきおいよく振り返る俺は通りすがりの人にぶつかる。俺はひたすら謝りながら、店の奥を見る。
「薫(カオル)…声大きいよ~眠いんだから」
「じゃあっちのテーブルの方にいてよ。起きてもらわなきゃ困ります!まだ私たちの担当の時間なんだから」
眠そうな顔をして、奥に姿を見せた彼女。
入学式より少し痩せたようだが、髪をゆるくアップにさせ、淡い色のチュニックが動く度にふわりとなる。
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