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葵衣は、あくびを手で隠しながら、俺の横を通りすぎイスに座る。
「はい、300円です」
「あ、ども」
視線を葵衣からクレープに戻す。それに気づいた薫が
「だらしないでしょ?彼氏とケンカもしてないのに、1人で悶々と考えて寝てないの」
「薫!!」
「目、覚めた?」
俺は黙って聞いていたが、2人の間では会話が成り立っている。葵衣の表情はわからないが怒っている口調、薫はいじわるな顔して笑っていた。
クレープをうけとり葵衣の方を見る。
「いっ?!」
葵衣から睨まれていた。予想外の出来事に変な声を出してしまう。
「俺、何もしてないし!」
「だって聞いてた」
口を尖らせて、テーブルに頬杖をつく。
―…かわいい
俺は迷わず向かいのイスに座り
「クレープ食う?」
―気のきいたことが言えない…
葵衣は差し出されたクレープの生クリームを指ですくい、ペロッとなめる。
―やべ
「忘れてね、さっきの話…。それとありがと」
葵衣の行動に、心臓がどうかなりそうだった。葵衣は眠そうだが少し笑った。
―作り笑いか…
「俺、入学式ん時に話したと思うんだけど…覚えてる?」
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