学祭

4/7
前へ
/105ページ
次へ
葵衣は、あくびを手で隠しながら、俺の横を通りすぎイスに座る。 「はい、300円です」 「あ、ども」 視線を葵衣からクレープに戻す。それに気づいた薫が 「だらしないでしょ?彼氏とケンカもしてないのに、1人で悶々と考えて寝てないの」 「薫!!」 「目、覚めた?」 俺は黙って聞いていたが、2人の間では会話が成り立っている。葵衣の表情はわからないが怒っている口調、薫はいじわるな顔して笑っていた。 クレープをうけとり葵衣の方を見る。 「いっ?!」 葵衣から睨まれていた。予想外の出来事に変な声を出してしまう。 「俺、何もしてないし!」 「だって聞いてた」 口を尖らせて、テーブルに頬杖をつく。 ―…かわいい 俺は迷わず向かいのイスに座り 「クレープ食う?」 ―気のきいたことが言えない… 葵衣は差し出されたクレープの生クリームを指ですくい、ペロッとなめる。 ―やべ 「忘れてね、さっきの話…。それとありがと」 葵衣の行動に、心臓がどうかなりそうだった。葵衣は眠そうだが少し笑った。 ―作り笑いか… 「俺、入学式ん時に話したと思うんだけど…覚えてる?」
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

718人が本棚に入れています
本棚に追加