近すぎて、届かない

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  「おー…またやってんなー」     光が今にも俺につかみ掛かろうとした正にその時、空き教室のドアが開いて優が入って来た。 普段なら欝陶しいたらし男だけど、今の俺からしたら救世主。 いつも大人しく光にパシられてるからって別に俺はマゾじゃないし。     「優!助けろっ!!」   「はぁ?何で俺がテメーみてーなへたれに命令されなきゃいけねーんだよ」     優は俺に向かって冷たい言葉を投げ付けた後、教室の隅に積み上げられた机に座って俺らを面白そうに見ながら昼飯のコロッケパンを食べ始めた。     …やっぱり、こいつに助け求めた俺が間違ってた。       「…お前らの痴話喧嘩見てんのも楽しーんだけどさ、そろそろ嵐が来るぜー?」    「……嵐?」     優の言葉に俺と光が頭の上に『?』を浮かべた時、教室のドアが開いて明るい声が空き教室に響いた。     「あーっ、みんなここにいたんだ、急にいなくなるから探したんだよー?」   「暁っ……」     その声に光が嬉しそうな声を上げて振り向き、そして固まった。     「…ども」     そこには光が可愛がってる子犬のような人懐こい笑顔の暁と、それと正反対の無愛想な転校生がいた。
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