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『暁早く来いって、いつものとこだから』
「待ってよ光ー、今庭の水まきしてるんだから…」
ジリジリ…
むぎわら帽子越しの真夏の日差しが熱い。
携帯電話を握る手もじっとり汗ばんで、今にも手から滑り落ちて行きそう。
「あと少ししたら行くから待っててよ?」
『しかたねーなー…真にアイス買って来させるけど、何いい?』
「じゃー俺パピコー」
『了解』
電話の向こうで真の抗議の声が聞こえたけど、無視して切ってやった。
暑くて、今はただ涼しくなりたかった。
真と光の痴話喧嘩なんか聞いてたら余計暑苦しいし。
ホースの先を指で潰して、シャァア…と水をまく。
日差しが反射してきらきら光る。
わざと上に向けて水しぶきを浴びて。
うん、気持ちいい。
ふと隣りの家に目を向けると引越しの最中らしく、せっせと忙しそうに荷物を運び込んでいる。
この暑いのによくやるなぁなんて考えてたら、黒い長めの髪の毛が目に入った。
女の子だと思ってホースの水を止めて垣根から身を乗り出すと、相手もこっちに気付いて切れ長の綺麗な瞳と視線が合う。
「…お前、誰?」
残念。
黒髪セミロングの持ち主は、俺より少し背の高い男の子でした。
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