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「ねー、それより名前教えてってばー」
しつこく食い下がってたら笑いも治まったらしく、諦めたように溜め息をついてこっちを見た。
「実だよ、お前は?」
残念ながらその顔は笑ってなくて呆れたような表情だったけど、やっと名前を教えてくれたのが嬉しくて。
「俺、暁!よろしくねっ」
今までで一番の笑顔で笑いかけた。
「おぅ、よろしくな」
そしたらそこで初めて、笑った顔が見えて。
真夏の太陽に照らされた実の笑顔は、なんだか凄く綺麗だった。
「実ー?早く荷物運んじゃいなさい!」
いきなり聞こえた声にはっとなると実のお母さんらしい人が実を呼んでた。
「今行く。じゃあな、暁」
「え、あ、うん…」
実が家の中に入るのをなんとなく見てたら携帯が鳴り出した。
聞き慣れた着信音とディスプレイには【ヒカル】の三文字。
そこでようやく待ち合わせを思い出した。
『暁、何やってんだよ。アイス溶けんぞー』
「ごめん、今行くから!」
急いで濡れた服を着替えてチャリを走らせる。
頭は濡れたままだったけどしかたない。
頭の中ではなぜか、実の顔と実に呼ばれた俺の名前がずっとぐるぐるしてたけど、それがなんだか心地よくて。
光達とも気が合うといいななんて考えながら、ペダルを勢いよく踏んで坂道を滑り降りた。
これってさ
ある意味運命、かもね?
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