遠ざかる宝物

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  「お~い、席着け~HR始めるぞ~」     真の買ってきたメロンパンを頬張っていたら、担任の『ひょろ』こと兵藤が入って来て周りが少しずつ席に着き始める。 ま、一回二回で言うこと聞くようなクラスじゃねーけど。 ひょろも大変だよなー… 体育科の担任なんて明らかに似合ってねーのに。     「何回言わせる気だ!?…って楠木、なんでお前は床に倒れてるんだ」     俺の隣で伸びてた真もようやく自分の席に座って、さっきよりは静かになった頃ひょろも諦めてHRを始める。   どうやら今日は転校生が来るらしい。 どーせ俺には関係ねーけど。     「桜井、入ってこ~い」     ひょろの間の抜けた声に呼ばれて入って来た奴は、黒い長めの髪のクールな男だった。     「桜井実だ、皆仲良くしてやれよ~」     …………ミ、ノル?     まさかと思ってちらりと隣を見ると、案の定暁のキラキラした顔が転校生を見つめていて。     …こいつ、か。     運が悪いのか何なのか、その転校生は暁のすぐ後ろの席になった。 早速暁は椅子に体ごと逆に座って嬉しそうに話し掛けている。     「同じクラスなるとかすごくない!?うわー超嬉しいーなんか運命感じるー」   「…お前相変わらずバカっぽいな」   「なんだよそれー」     キラキラした笑顔で楽しそうに話す暁を見てたら、不意に転校生と目が合った。 軽く会釈されたけど、無性にイライラしてた俺はソイツに思いっ切りガン飛ばしてやった。     暁には気付かれないように。
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