楓ちゃんの大作戦

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こんな事をしたのは、小学校の体育の授業以来だ。思うように身体が進まない。近いはずの携帯との距離が、永久(とわ)のように長く感じた。 「先……輩……」 それでも私は進むのを止めない。この壁を越えた先には、先輩が微笑みながら待っている。弱音なんて吐けるわけがなかった。 「あと……少し……」 段々と携帯に手が届く距離まで近付いている。後30センチ。あと5センチ。 そして――掴んだ。 「すいません先輩!!えと、色々ありましてちょっとアクシデントが!でも、もう大丈夫ですから。その……先輩?」 『…………』 声は聞こえない。通話は終了されていた。嘘のような電子音だけが、耳を通り過ぎていく。 ―― 「一体なんだったんだろうか?」 自宅のマンションの階段に座りながら、僕は思案に暮れていた。
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