~プロローグ~

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街は少しずつ冬の準備を整え、ある所では少し気の早いクリスマスのイルミネーションまで輝いていた。 俺はと言えば、東京の街でひとりの女性を待っていた。 最近のこの街は幼い頃の街並みとは違い、成長なのか失敗なのか、緑や木々も、沢山あるようには見えるがすべてコンピューターグラフィックで出来ている。 実際触れようとしても触れることは出来ない。 むしろ触れようとする人もいない。 ほとんどの地面はコンクリートの次に出来た新しい素材で埋め立てられ、野球をしたり走り回ったりする校庭もない。 学校だってビルの中にある。 そう言えば昔起きたアメリカでのテロ。 模倣犯かなんかで、この街にも、世界の主要都市でも、何度もテロが起きた。 この街もそのテロの対策とやらで、銃・刀はもちろん、ライター、その他の火気、ありとあらゆるものが所持することさえ禁止されていた。 校庭もない学校。 色々縛られた法律。 それでも満足だなと思えてる今の人々。 俺はどこかにモヤモヤを持っていた。 あの頃の俺たちのような出来事はもう起こらないんだなと、交差点の角にあるコーヒーショップから、流れる人波を見つめそんなことを思っていた。俺は不安だった。 遠く感じてた未来が今であること、変われない自分自身の事を考えるといたたまれない気持ちになった。 忘れられない日ってのは人生でそんなに沢山あるわけじゃないだろうが、あの日のことはどうしても忘れられない。 心のどこかで今もかさぶたになっているあの日を思いだしていた。
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