無精髭～僕はまだ、生きている～

すげぇ～よ

旦那さんは売店で買ったアイスをフタを取ってから、奥さんに渡してた。

奥さんはそれを笑いながら、本当にゆっくりゆっくりと口にあてていた。

旦那さんが『とけてから食べな』って言ってた。
奥さんは笑っていた。

旦那さんが『ごめん』って言ってから、体の向きを変えて、タバコに火をつけてた。

でも、体はくっついてた…

僕のケムリもなんだか悪く思えて、奥さんの反対側へフゥーとした。
僕があからさまにやり過ぎたのか、旦那さんが僕にスミマセンって謝って…自分の馬鹿さかげんに呆れた…そんな午後だった。

明らかに邪魔者なんだけど、なんだかずっと見ていたい気持ちになって、邪魔者になっていた…そんな少し気持ちの良くなった午後だった。

それから２人ずっと笑いながら話してた。
子供の話しとか、なんか色々。
笑いながら話してた。

そしたら看護師さんが迎えに来て、２人して苦笑いしながら看護師さんと３人で戻って行った。

帰るときにも、僕に笑顔で会釈をしてくれた。

旦那さんは優しそうで、奥さんは幸せそうで…いいなぁと感じた。

その日の夜の一服の時、１人でいる旦那さんとまた、顔を合わせた。