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「・・・わぁ~い・・・」
刹那は意味もなく言った。
その理由はと言うと。
「参った。迷ったか」
ただでさえ大堂高校にいる友達は少ないのに、自分は方向音痴なのだ。
「困ったなぁ。誰かいれば助かるのだけれど」
そう言いながら周りを見渡す。
するとグラウンドにある木に目がついた。
一つは桜、一つは切株、一つは・・・杉?
刹那はその三つに惹かれ、ゆっくり近づく。
近くまで来ると、刹那は桜に近づく。
「今年の桜は綺麗・・・」
刹那は風に乗りながら散る花びらを取ろうとするも、空をかいて終わる。
刹那はそんな自分の手を黙って見てから、桜の幹に手を触れる。
花びらを掴めない事で、何だか苛々した刹那は足で桜の幹を蹴った。
『いたっ!!』
「!!?」
女性の声が聞こえた気がして刹那は周りを見渡す。
誰もいない。空耳だろうか。
そう判断した刹那は、木の切株の上を歩いて渡ると、杉らしき木を見上げる。
「・・・おっきい。長生きしてるんだろいな。形が自然だ」
刹那は切株に腰を下ろしその木を見上げていると。
「何してるの?君」
不機嫌そうな声がした。
驚いて振り向けば、そこに男子生徒がいた。
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