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「ご飯まだ~?」
息子が言った。
息子の名前は健太、四人家族の長男だ。
もう中学3年生だというのに、現代っ子らしく頼りがいがない。
「お母さん、まだ~?」
力なく聞いているのは、長女の綾香。
こちらはまだ小学5年生だというのに、兄に似ずよく家の手伝いをしてくれる。
しかし、まだ五年生になったばかりということもあり、小学生らしく甘えてくる場面も多々見受けられる。
「じゃあ、そろそろ作ろうか」
そう言ったのは妻の明菜だ。
よく近所の‘‘ママたち’’と軽く1時間は話しているが、家の事はしっかりとやってくれる。
「今日のご飯何?」
のんきに夕飯の内容を聞いているのが、この物語の主人公である“平沼太郎’’だ。
「分かったから、作るから待ってて」
妻が言った。
あり触れた日常で何の変哲も無い平和な1日。
この日が、そんな平和な日々の最後となることは、家族の誰もが考えもしていなかった。
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