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だめだよ、
そう言って机の上にあった色とりどりのビーズを払いのける。
まるで雨が降っているような音を立ててバラバラと机から転がり落ちたビーズを
目で追ってみた。何て美しい雨なんだろう。不覚にもそう思ってしまった。
しかし彼は僕の行為とビーズが落ちた音に驚きと怒りが芽生えたらしく、
いつもよりも増してぶっきらぼうな表情が曇った。
そう、それでいいんだ。
その悔しそうな顔がたまらなく僕をそそるんだ。
彼はそうだ、培ってきたものを壊されたときに
ひどく悲しんだ顔をする。怒りと悲しみに溢れ、声までもが震えるのが分かった。
その瞬間ぐらっ、と視界が揺れた。どうやら胸倉を掴まれたらしい。
金髪のやわらかい髪と褐色の肌が眼の前にあることさえも
そそられる僕はきっとどうかしているに違いない。
なんていうんだろ、こういうの。前に学園の図書館で
読んだことがある。異常愛?いや、愛し合っているとは言わないよな?これは。
僕は怒りに震えた彼を見て、クスリと笑う。
「君のその顔が見たかったんだ」
また酷く悲しい顔をした。
そのまま泣いてほしいな。泣いてよ、泣けよ。
どうすれば泣いてくれる?
ホストのような、
「嘘だよ、ごめんね。僕は君が消えていきそうなカンジがして怖かったんだ」
なんて甘い嘘をつけばいいのか。
バシ、と鈍い音がした。どうやら殴られたようだ。痛い。
それとともに目が覚めた気がした。
ぼくは、なにをしているんだろう。
「あ、ごめん・・・、僕・・・」
急いで散らばったビーズを拾い集める。手伝おうとしたナッツに、
いいよ僕が悪いんだからナッツは作業続けてて、と伝えた。
何で僕がやったのに君が手伝う必要があるんだ。
揺らぐことの無いブラウンの瞳に向かって苦笑いをする。
しかし、これも嘘だ。ホストのような甘い嘘ではないけれども。
(そんな優しさはいらないから、泣いて見せてよ。)
ビーズを拾おうと下を向いた僕は顔を上げることは無かった。
零れ落ちる生暖かい液体が、上を向くことを阻止したからだ。
僕はきっとどうかしてるかもしれない。
08.03.25
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