帰郷。

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どのくらい時間が経っただろう。 男はすっかりうたた寝をしていた。     なれない昼間の運動と、フローリングに転がる六本の500mlのビールの空き缶が男を気持ちの良い世界へといざなってくれている。     テレビもつけっぱなしだが、もう胡散臭い外人の通販番組しかやっていない。         ふいに、家のチャイムが鳴った。     一回、二回。 三回目で男は目を覚ます。     四回目でふらつきながら立ち上がり、五回目で眠い目をこすり、軽い二日酔いに襲われながら玄関の方へ歩き出した。     「は~い、誰?」 寝起きでまだ声がしゃがれる。     ドアノブに手をかけるが返事がまだないので鍵はあけずにいた。     「…妹だけど…起きてる?」     その声は間違いなく妹の声だった。   鍵をあけてドアノブを回す。 戸を開くとそこには約四年ぶりに会う妹が立っていた。     上下ねずみ色のスウェットをだらしなく着てはいたが、しばらく会わないうちに大人っぽくなっていた。   金髪ギャルメイクは相変わらずで、腕に金属の輪っかがジャラジャラついていて、両耳にばかでかいピアスもつけているが、どことなく化粧に落ち着きが見られる。     そして何より元々痩せ型だが、より痩せたように見えた。   「少し痩せたね。」  最初に出た台詞だった。     「うん。お兄ちゃん久し振り。元気にしてた?」   ウェーブがかった髪の毛が風になびく。 肩より少し下ぐらいの長さだが、パーマをほどいたら腰までの長さになるのではないだろうか。     「彼女にふられたけどなんとかね。 …あがってく?」     「ううん、顔を見に来ただけだから。」 腕輪がシャン、と鳴った。     「そっか。そういや彼氏はできたのか?」   これだけ綺麗になった妹だ。男の一人や二人いてもおかしくはない。 兄として聞いておかねば。     「…今度ゆっくり話すよ。」     「そうか。気になるな、今度絶対教えろよ。」     ちょっと妹がはにかんだ。     「じゃあ、私帰るね。」     「本当にあがってかないのか?片付けたばかりだから綺麗だよ?」     「ううん、いいの。顔見に来ただけだから。じゃあね。」     「そうか、じゃあ明日上行くからな。」   そこまで言うと妹はすぐ脇の階段をのぼっていった。 のぞき込むと後ろ姿が少し悲しく見える。
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