結末

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すると、視界の中に、ゆっくりと立ち上がり、僕の方を振り向くシュウの姿があった。 その顔には、複雑そうな曖昧な笑みが浮かんでいた。 「ハハハ、おっかしーの。」 「へ?」 「ビビって損した。何だよソレ。何で鉄平が謝ってんだよ。」 「だ、だって・・・」 「意味分かんねぇ。つーか馬鹿みてぇ。 俺さ・・・てっきりお前に責められるのかと思ってたのに。 ・・・だから怖くて逃げたし・・・ってもうダメだな、俺カッコ悪すぎ。 相馬シュウ終了のお知らせだよ。」 「え?えっと・・・」 シュウの一言一言がうまく飲み込めずに、僕はだらしなく口を開ける。 僕がシュウを責める? 何で? シュウが僕を責めることがあったとしても、僕にはその理由が全くない。 だけど混乱してる僕をほっといて、シュウはかまわず続ける。 「縛ってたの、明らかに俺の方じゃん。 6年前のあの日から、鉄平のためだって自分に言い聞かせて、ずっとお前のやることすること制限してた。 ホント、独りよがりだったよな、俺。」 「ちが・・・」 「違わねぇよ。結局は全部自分のためだったんだから。 少しでも幼い頃の罪悪感を消したかった。 だから、お前の面倒見とけば、いつか許されると思ってたんだよ。 ・・・あの日、お前のこと見捨てた自分を。 母さんに優しくできなかった自分を。 父さんを引き止めることができなかった自分を。 強くいれなかった自分を。 ・・・誰かに許してもらえると思ってた。」 「シュウ、でも・・・」 「どう?失望しただろ、俺に。」 シュウはそう言うと、この場に似合わず、ニカっと笑って見せた。 その笑い方は、昔と変わらず無邪気だけど、どこか寂しげだ。 太陽のようなあのシュウの笑顔さえも、 僕が奪ってしまったんだろうか。
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