835人が本棚に入れています
本棚に追加
/564ページ
「言い方おかしいし傲慢かもしれねぇけど、人に優しくすることがこんなに気持ち良いことだとは思わなかった。
イライラも吹っ飛ぶし、自分のことも少しは好きになれた。
これは、全部鉄平が俺に教えてくれたことだ。」
少しずつ、少しずつだけど、
シュウの言葉の奥の意味が掴めてきた。
それと同時に、胸の奥をジワジワと押しつぶされる感覚が起こる。
だけどこの感覚は、全然苦しくない。
「だけど俺はやっぱり未熟で、6年前に自分の弱さが全部さらけ出された。
自分はこの程度なんだって、自覚した。
でも、鉄平を守り続ける義務も、責任も、俺にはあった。
・・・だからもっと、強くなろうと思った。」
胸の奥を刺激するその痛みに、自然と涙が目に浮かぶ。
僕は精一杯唇を噛みしめて、シュウの漆黒の瞳を見つめる。
「もっと立派な人間になりたかったんだ。
また何かあった時は、今度こそ、大事なモノは完璧に守れるように。」
最初のコメントを投稿しよう!