結末

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「誰に対しても優しくなれる奴になりたかった。 自分のことばっか考えるのはやめにした。 もっと人の心に敏感になれるようにした。 身体も鍛えた。勉強もした。 ・・・まあ俺馬鹿だから、勉強はあんま身につかなかったけど。」 最後にシュウはそう付け足すと、茶化すように笑った。 「“強くなりたい” ただそのことだけ考えて、突っ走ってた。 ・・・そしたら、 いつのまにか・・・高校では生徒会長なんかやってた。 何でか校内でヒーロー呼ばわりもされた。 ・・・どうゆことか分かるか?鉄平。 お前も、俺のことヒーローだって言ったよな。」 僕は小さく頷いた。 水滴がこぼれた。 嗚咽が小さく口から洩れる。 そして、 「ヒーロー“相馬シュウ”を作ってくれたのは・・・ 誰でもない、お前だよ、鉄平。」 そう言って、シュウは笑った。 「ぜんぶ鉄平が、俺にくれたもんだ。」 ・・・涙が止められない。 どうしようもなく温かい涙が、僕の頬を伝っていく。 やっぱり君は、 優しすぎる。 「ぅ・・・ゴメ、シュウ・・・僕・・・」 「何でお前が謝ってんだよー。 だから、鉄平がこんな俺をヒーローにしてくれたんだって。 欠陥だらけのヒーローだったけど。」 「ちが・・・シュウは・・・ッ」 「ほい、握手。」 ニュ。 唐突にシュウに右手を突きだされ、僕は意味が分からず目をパチクリさせた。 そして、ジ、っとその右手をただ見つめる。 シュウはそんな僕を可笑しそうに笑うと、その右手を更に僕の方に寄せた。
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