仁王雅治 『幻影の君』 ver.serious

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「っ……」 瞼をゆっくりと開けると其処には真っ白な壁が見えた。 辺りを見渡してみるが何も特質する物は無く 白一色が広がっていた。 天井も壁も床もこの空間の全てが何も無く真っ白で白全体に統一されている。 ふと思った。 この部屋の白はあの俺と彼女を包み込んだ 白い光に似ている、と。 「そうじゃ…!彼奴は…!?」 俺が必死に、追い掛けて来た彼女。 桜並木の中、真っ白な光に包まれて 見失った―。 じゃけど居たのは間違い無い。 それに俺は何故かまだこの空間に見失った彼女が 居る様な気がした。 真っ白い空間の中四方八方に何も無くただ光のような真っ白が広がる無機質な部屋で 追い掛けて来た彼女を探す。 必死にけど慎重に 彼女を決して見逃さぬ様に。 視線を動かしてみるが何も無く何も見えずただ真っ白な色が見えるだけ。 俺は彼女を探す為ただ砂丘の様に真っ白く光の様に何処までも続いていそうな空間を ―歩き出した。
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