周囲と違う現実

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その後、僕は扉の前で、ただ呆然としていた。 君の家の鉄扉の換気口の間から、優しい匂いがする。 コンクリート造。 冷たく涼しい風の中に、そうではない優しく穏やかで、暖かく包み込む様な香りを感じた。 涙が滝のようにこぼれて落ちる。 君への切なさと、愛しさを断ち切らなければならないという現実。 僕は今でも昨日の事の様に再現出来る。 あの言葉が脳裏からはなれられないからである。 小さな子供を一言で黙らせてしまう言葉。 泣く子も黙るという言葉があるが、似たようなものなのだろうか? 僕にはこの〝におい〟がとても羨ましく、いとおしく、反面、妬ましく、憎いと思えた。
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