稲荷の御珠

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ヤレヤレだぜ……   ベットの上に仁王立ちになった 元女だった物は 既に 人とも 獣とも 見分けの付かない物になっていた                    『黒よ……平気かい?』 先程迄の声とは違う 地の底から響くような声で 黒が答える       『師匠…… コイツ 食べても 構いませんよねぇ』 『お前にミケの様な 霊体だけ食べるなんて お上品な事は望んでねぇが なるべくなら…』     俺が言い終わる前に   『努力してみますよ…ゴグググ』と 黒が答える      ゴゥッ!! 黒が飛び掛かった イヤその姿は既にただの「妖怪」でしかない 体は人間程まで膨れ上がり 口は耳まで裂け 尻尾の先が二股に別れている……猫ですらない                 その間に 俺は 女だった物に向けて 呪文を唱えながら 中に居る筈の 女の良心に話しかけた    『なぁ アンタ…… 辛くはないかい?血を分けた姉妹を殺そうなんて…… 真っ当な人間が 考える事じゃねぇ ソイツは自分の意志じゃぁねぇ そうだろ? もしかして 誰かに 力を借りてねぇかぃ?』            『タス……ケ…テ…』 優しい声が帰って来た
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