~第二話~ 犬神

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その日  俺は マスターと二人で 駅二つ離れた町の神社へ 絵を描きに行くことになった                 よく考えりゃぁ 神社なんだから アイツ等が居ても全く不思議はなかったんだが………      マスターの有無を云わせぬ行動力に圧倒され   ノコノコ 付いて来ちまった……                     鳥居を潜り 歩いて行くと正面に 小さな それでいて 味のある建物が見えて来た                    満足そうなマスターの顔を見ると 俺まで 嬉しくなっちまう                 マスターの肩の上で揺られながら小さな異変を見逃していたんだ               ヨッコラセと マスターはイーゼルとキャンバスを降ろし バックから 絵の具とパレットを出して 若葉の美しい 境内を描き始めた         俺はマスターの邪魔をしないように辺りを 散策に出た………これが間違いだった        『あぁ― クセェクセェ』棒読みだ……しかも 厭味たっぷりの言い回し  『猫モドキの 臭ぇ匂いがすらぁ』『全くだねアンチャン♪猫又より 臭いよねアンチャン』    オィオィ…… 猫又より 臭いとは 聞き捨てならねぇなぁ         確かに 俺は 猫又じゃないし 猫でもない 「バケネコ」だ だが 『猫又より』とは 合点がいかない           『誰だいっ!喧嘩吹っ掛けるなら お門違いだぜぇ こちとら散策してるだけで アンタ等に 何かしようってんじゃねぇんだ』            『確かに 何にもしちゃいねぇだろうさ… だがなぁ 気にいらねぇんだよ! その 半端者の 臭ぇ 匂いがよ』         ガサガサと 茂みから出て来たのは「狛犬」だった 『そうだよね アンチャン臭いのは 気に入らないよねアンチャン』               一匹は いかにも乱暴そうな狛犬 もう一匹は 口のだらし無い 間抜けそうな狛犬          『そいつぁ すまなかったなぁ じゃぁ 俺は 他の場所に消えるよ』    俺は狛犬に尻尾を向けて さっさと 歩き始めた             『ナメテンジャネェッ!!コノッ 出来損ないがぁ!!』いきなり背後から襲い掛かってきやがった だが 俺はソイツを ヒラリとかわして 低い木の枝に飛び乗った
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