~第二話~ 犬神

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木の枝の下に 凶暴そうな狛犬が見えた     『オィオィ 後ろからとは いきなりなご挨拶じゃぁねぇか』       その瞬間 頭に鈍い痛みが  ゴスンッ!!   しまった……     狛犬は二匹いたんだ   『ギャハハハハ アンチャンやったよ♪見て見て コイツのろまだから すぐにやれたよ』      もう一匹の間抜け面した狛犬が 俺とタイミングを合わせて跳んでいたんだ           『よくやった 狛二 子猫チャンは退屈みたいだから少しばかり可愛がってやりな』         狛二……どうやら 間抜け面の名前らしいが……  『随分 手荒いお誘いだなぁ…… コイツは お釣りだ とっときなっ!!』 後頭部に 激痛を覚えながら 渾身の一撃を放った 「風牙」技の名前だ 風の刃を爪に乗せて放つ俺の得意技            ゴキッ……   期待とは 裏腹に 自慢の俺の爪は 折れていた……           『なんだぁ?何か当たったか??』厳つい顔を歪ませて ニヤニヤと 狛犬が笑った       「風牙」が弾かれたのか… 五行にしたがって出来ている物であれば 全て真っ二つに出来る 俺の得意技が…有り得ない事だが 効かない………               『何かの 術か……それとも 呪か?』      二匹の狛犬に いたぶられながら 考えていた……            ヤバイ……… これ以上 殴られ続けたら 意識までとんじまう……… 狛犬達の一瞬の隙を見付けて 俺は走り出した……   『オヤオヤ?ママに泣き付くのかい? それとも 先生ぇに 言い付けるかぁ?』         悔しいが ここは 逃げるしかない                  何の準備もなく 狛犬二匹とやり合うのは 得策じゃないし 命懸けなんて スマートじゃない    後ろから追い掛けてくる狛犬を必死になって 引き離す         『あぁ……スマートじゃない』         どれだけ走っただろう… 辺りは住宅街に変わっていた         『ヤレヤレ……少しばかりダイエットになっただろぅ』         自分に言いながら 辺りを見回す……… 何処なんだろぅ………      見覚えのない町並み   知らない臭い     『まいったぞ……さっぱり 解らない』
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