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『旦那 旦那ぁ そこの旦那』 どこからか 声がする…… 『何処見てるんです?猫の旦那 上ですよ 上 解りますか??』 顔を上げると 電信柱の上に一羽の烏がコチラを向いて停まっている 『あんたかい?今 俺を呼んだのは?』 『えぇ 私ですよ 猫の旦那… お困りの様だったんで 声を掛けさせていただきました』 怪訝そうに見ている俺を見て烏が続けた 『私は 烏の「九髏」と言います けして 怪しい者じゃぁありませんよ』 否……力いっぱい怪しいじゃないか…… 元々 動物は 陸の者 空の者 水の者 と それぞれが違う言葉を話す…… 稀に俺のように頭の良い奴が 他の言葉を話せるが そうそう居るもんじゃない…まして 自分から話し掛ける奴等 皆無だ なのに この烏 自分から話し掛けた上に 俺を助けたい等と謂いやがる 『すまねぇな…… 餌と馴れ合う趣味はねぇんだ』 諦める事を知らないのか しつこく烏が言う 『いやだなぁ 旦那ぁ 私は名前だって 言ってますでしょうに 信用しないまでも 話しくらい聞いてくださいな』 『何か 面白い話しでも有るのかい?』 俺の問いに烏が答えた 『食いつきましたね旦那♪』嫌な言い回しに 俺は益々信用出来ないと感じ『やっぱり やめとく』と 冷たく 棒読みで 返してやった 『待って下さいよぉ旦那ぁ』まだ 着いてきやがる『私は 烏 ですよ?空を飛べるんだ』そんな事は見れば解る 『上からだと 色々見えるんですよぉ…』 『じゃぁ聞くが この辺りに 稲荷の神社か祠は あるかい?』 『あぁ それなら 二つ目角を右に曲がった所の瓦屋根の家の中庭に 小さな祠が…』 そこまで聞いて俺は 烏に 尻尾を向けて歩き出した 『あれ?あれれ?ちょっと旦那 行っちゃうんですかぁ 旦那ぁ』 ホントに 五月蝿い烏だ…二つ目の角を右に曲がった所に 瓦屋根の家は 本当にあった 塀に上ると こっちは 裏側らしく 中庭が目の前にあり 祠が見て取れた 『ネ♪ホントにあったでしょ?旦那♪』 俺の真横に 烏が降りた が 無視して 中庭へと飛び降り 祠へ向かった 傷だらけの体が 重い
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