狐と犬

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『なんだってぇ~!!!狛犬と喧嘩~!!』  鼓膜が破れる程の 大声で稲荷の御珠 が叫んでいた           御珠の住んでいる神社とは 祠を通して 話が出来た 言わば 公衆電話のような物だ   『そんな デカイ声を出すな 傷だらけの体に響く』『あんた怪我してんのかい?嫌だよアンタ あたしと祝言挙げる前に 死んじまう事ぁ ないよね?』 相変わらず 間抜けな事を言う 女狐だ……    猫と狐が結婚なんて 聞いた事がない         『心配してるんだから 何とか お言いよっ!!』 女狐が 着物の袖を噛んで「キ――――ッ!!」と言っている 姿が想像出来る 『死にゃぁ しないさ だが 少しばかり 疲れてる この辺りに 隠れる場所が在れば良いんだが』『待っとくれアンタ♪今すぐ そこへ向かうから祠の下で休んでいて おくれよ♪ただ 駅五つ離れてるから少しばかり時間が 掛かっちまうけど 急いで行くからね』と 通話が切れた……電話なら「ツーッツーッツーッ」と 鳴っているだろう『旦那の 奥様ですか?』また 烏だ……いつの間にか 俺の後で 話しを聞いていたらしい『愛されてるんですねぇ』    勝手に納得して「ウンウン」と頷いている 烏をほって置いて 俺は 祠の下に潜り込み 目を閉じた………         祠の下には 狐の癒し火の効果があった 多分 御珠がそのように してくれたのだろう……     『オィ 烏…… 一言でも口を開いたら この爪で八つ裂きにするから そう思え』そう言って 眠りについた                    暖かい……                 まるで 母親に抱かれているようだ……                そう言えば 逃げるのに夢中で マスターを 置いてきちまったが……   今頃心配しては いないだろうか……                 あぁ…傷の痛みが和らいでいく……                 良い匂いだ……               匂い?        何の匂いだ?……              『アンタ♪ こんなに傷作っちまってぇ 色男が台無しじゃぁ ないかぁ……』目を開けると 目の前に 白い肉の山が二つ………『くっ………苦しいっ!!』両前足を突っ張り そこから離れる     どうやら御珠の胸に抱かれて眠っていたらしい
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