狐と犬

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吽鎧(ウンガイ)とは 犬神の長の名前で 千年もの間 犬神一族をまとめて来た豪傑爺さんだ     稲荷一族の御珠も 族長ではあるが 格が違う オーラと言うか 風格と言うかとにかく 桁外れの強さに仏の様な慈愛の精神 それを兼ね備えている   『爺さんに頼めば 事は 済むだろうが……個人的に……色々とあってな』歩きながら 俺は二匹に話していた        『アタシは… 狐だから 犬が苦手でさぁ その上吽鎧のスケベ爺さん相手じゃ………ハァ……族長会議の時だって逃げ出したいのを 我慢してたんだ』  どうやら 御珠は 吽鎧が かなり苦手の様だ    そこへ 烏が口を挟んだ 『へええ 稲荷の姉さんにも 駄目なもんが あるんですねぇ』言い終わる瞬間に 御珠のゲンコツで 烏が俺の横に落ちて来た 『ヤイッ烏!!テメエ!アタシを馬鹿にしてるのかい!!』      まぁ 自業自得だな……            くだらない話しにも飽きた頃 周りは 山道になっていた        フワフワと浮いていた御珠が 結界を気にして俺の横へ降りてくる    『あれ?姉さん どうかしたんですか?』    「結界だよ」と俺が教えようとした瞬間 烏が 引っ掛かった        バチバチバチ!! 漫画なら骨が見えてるだろう 感電した烏が地面へボタリと墜ちた    『……お前 よく落ちる烏だなぁ……』飽きれ顔で俺が見てると 辺りの気配が変わった       カサカサカサ…… ザザザザ……          犬神一族の者か……  『吽鎧の爺さんに会いに来た 俺だ ミダスだ…』 俺の言葉に 返事が無い カサカサカサ……枯れ葉を踏んで走る音………    『アタシも 居るよぉ 稲荷の長の御珠だよ 解るだろぅ………………………なんだい……嫌な臭いだねぇ…』       返事が全く無い    『御珠……烏を連れて 上へ飛べ……』小声で話す 『あいよ❤アンタ❤』            ゴゥッ!と 飛び出して来たのは 先刻の狛犬であった 犬神の結界は 狛犬ならスルー出来る その為 この二匹は 結界を知る事なく登って来たのだろう「チッ」と舌打ちをしたのは 乱暴そうな 狛犬だった『逃げ方が 上手いじやねぇか 猫モドキ』  『御褒めに 預かり 光栄だよ この ワン公共!』
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