狐と犬

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   ジャッ!    大地を蹴って 俺が横に跳ぶ  ズドンッ!   と俺の居た場所に寸分の狂いもなく狛二の一撃が大地を削る      『狛一アンチャン… コイツ さっきより早いよ』   バキバキッ    屈めた俺の頭の上を 狛一の爪がかすり後の幹に傷を付ける 俺は更に横に跳び 幹と幹の間を蹴り上がり しっかりとした 太めの枝に乗った     『ホントに早いな……』『あいつ 木の上なら 俺達が届かないと 思ってるんだよアンチャン』  この二匹に「風牙」は効かない 残る技は「風刃」この技は 鎌鼬の様に 風の刃をつむじ風に乗せてぶつける  周りに神社があった あの場所では 出せなかった技だ       ガォゥッ!   飛び込んで来た 狛二に 「風刃」を叩き込む     ギャンッ!!  見事に決まり 狛二がすっ飛ぶ『テメ……』狛一が言葉を切った     狛一の視線の先には 複数の犬神一族が 牙を剥き出し唸りを上げていた  『どうやら 他人様の庭先だったらしいな……狛二 立てなきゃ 置いていくぞ』 そう言うと 狛一は 狛二の答えも聞かずに後へ走り出した 『アンチャン待ってくれぇ』狛二が 後を追って 逃げ出した             『久しいな…… 庭先で馬鹿騒ぎしてるから見に来たら お前だったのか ミダスよ』       コイツは 吽鎧の孫で 阿形 顔見知りだ                『別に お前の間抜け面を 見に来た 訳じゃないぜ…… 爺さんは元気かよ』 『あぁ 奥座敷で待ってると 言っていた』
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