仙道

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『だからぁ 家の旦那が 狛犬に襲われたんだから 吽鎧爺さんにも 動いて貰わなきゃ 勝てないって 言ってんだよっ! まぁだ解んないのかい この唐変木!!』  全く持って 口の汚い女狐だ…呆れる 『フゥム……しかしなぁ……あの狛犬……フゥム……』 爺さんも 御珠相手にホトホト困り果てているじゃぁないか……なぁにが 「吽鎧爺さんが苦手」だ 爺さんの方が「御珠が苦手だ」と 今にも 言いそうじゃぁないか                奥座敷に来てから 3時間程経つが その間 ずっと 御珠の方が 優勢だ              『先程より ずっと 目をつぶっているが ミダス 何か 考え事か?』              阿形が 俺に話し掛けて来た 『呪だ……俺のかけた「呪」が 突然消えた…』           阿形が不思議そうに聞く 『ミダス お前 「呪」なぞ いつの間に 誰にかけたんだ?』                 この阿形(アギョウ) 一緒に「仙道」を 学んでいた頃と変わらん 間抜け振りだ『先刻…狛犬とのやり取りのさいに 狛一にな』            「呪」とは 呪いではない体に掛けるのが 「術」で精神に 掛けるのが「呪」だ 仙道を 学んだ者なら 相手の目を見るだけで 簡単に「呪」を掛ける事が出来るのだ          俺は 狛一に それをやっていた が……     消えたのだ              同じ仙道若しくは それに類する「道術」を学んでいれば 簡単に払う事が出来る   『誰かに 払われたのではないのか?』           本当に暢気な男だ    それであれば 俺がこんなに時間を掛けちゃいない 『仕掛けた相手が死んだのさ ねぇ そうなんだろ♪アンタ❤』 御珠の方が 余程利口に見える   『あぁ その様だ だがしかし その周りに 臭いすら残していないのが 気にかかるんだよ』    そう言えば 阿形の対が見えない 出掛けているのか『オィ 阿形 お前の対は何処に居る?』    と 聞かれた阿形ではなく 吽鎧爺さんが 話し出した         『今から 百年程前だったか……一族から抜けたんじゃよ… 跡を次ぐなら 吽獄にと 考えておったのに…… 何が不満じゃったのやら』       『俺の兄弟子は 放蕩者だった訳か……』    『恥ずかしい 話じゃて』
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