仙道

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『俺の対は お前に憧れていたようだ……その……自由と言うか…』   『自分勝手なだけだよ』 俺は阿形の言葉を切った           犬神には 本来 兄弟と言う感覚が無く 「対」と呼ぶ 兄弟としての感覚があるのは 幼い頃だけだ            成獣になると「狛犬」としての職務もある為だろう 皆 自分の兄弟の事を「対」と 呼んでいた             『そう言えば 俺達と一緒に烏が来ていた筈だが』 そう 烏の「九髏(クロウ)」が先程から見当たらない 『意識が戻ってから アチコチ見物しておったようじゃが 今頃は 仙道場でも覗いておるのじゃぁないかね』       『へぇ♪道場があるんだ♪アンタも昔 此処で習ってたんだろぅ?アタシも見てみたいよ』    無邪気に御珠が言うと 吽鎧が それならばと 若い者を呼び 御珠を案内するよう 言い付けた    『喰うんじゃ ねぇぞ』 俺が 言うと 御珠は  『アタシが 食べたいのはアンタだけだよぅ❤』 と ヌメリとした 淫猥な笑みを浮かべて言った            『行ったかよ…』『あぁ 行ったな…』『気付いていたか……』『当たりめぇだろ 俺と知って襲って来たんだ』『まだ理解出来ません 何故 対が あのような……』『息子なのか 貰い児なのか とにかく 奴の身内なのは 確かだ…』『でなければ ワシに会いに 来なんだわなぁ…』『あぁ 全くその通りだ』『お前は いつ 気付いたんだ?』『神社から逃げ出した後……かな』『では あの烏もか?…』『アレは 違うだろ… あんな粗忽者に従者は勤められねぇよ』    三人の話しは続いた…            『相手が 犬神の者と決まれば 黙って見ている訳にも行くまいよ』 吽鎧が 覚悟を決めたように   ギリッ と奥歯を噛んだ 『長…… この任 阿豪が適任かと…』『うむ…』           どうやら 阿豪(アゴウ)とか言う奴が この騒ぎを納めるらしい……     『その…… 阿豪とか言う奴ぁ 何者なんだい?』            俺が言うと 爺さんが答えた          『ワシの 跡を次ぐ者の名じゃ 覚えておくがいい』
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