犬神の誇り

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二つの影が 話しをしていた 一つは 人間のそれを遥に凌ぐ大きさ そしてもう一つは 人間程    二つの影は動く事無く ただ 話していた     『反刻を使うのか…』 『えぇ 私が核となり中へ入れば 自在に動きましょう』『それでお前は平気なのかよ』『平気な訳はありません……が……事を成す為… 代償は必要かと』『代償が 魂 二つかよ…』『ぃぇ…… もう二つ アチラにも払って頂きます』      影達の物騒な話し合いは 続いていた                            …… 俺は 吽鎧爺さんの後を歩きながら 仙道場へと向かっていた 途中何匹もの若者達が 擦れ違い様に 会釈をして行ったが 吽鎧爺さんは それを見るでも無く ただ 真っすぐに前を向いて 歩いて行った 俺の後ろからは 阿形が付いてくる      こいつも ただ 黙って歩いている                  『オィオィ 二人とも 葬式帰りじゃぁあるまいに一言くらい「ご苦労様」とか 声を掛けてやりゃぁ いいじゃぁねぇかよ』            『神聖な道場へ向かうのだから 口を開いてはならんのだよ』  阿形の奴 いつから こんなに 堅物になりやがったんだ              『ちっ 胸糞悪い……』            そんな やり取りをしながら 仙道場へと入って行った                     道場の中は 壁際に立てた蝋燭によって 相手の顔を確認するに足りる 明るさが 確保されていた   そして 奥のひときわ高い岩の上に 阿豪が 鎮座して 我々を待っていた  『中々 男前な跡取りじゃぁねぇかよ』     俺が言うと横に来た御珠が『アンタの次に 男前だよ♪』と 烏も続いた  『姉サンが言う 旦那の次ってのは いったい 何人くらい居るもんなんですかねぇ?』       『俺に 聞く話しじゃぁねぇだろぅ』                 爺さんが俺を呼んでいた 俺は ズカズカと 道場の真ん中を歩き 岩の手前から ひょいっ と 阿豪の目の前に跳んだ      『……貴方が……「ミダス」?……』     爺さんがどんな説明をしたのか解らないが 阿豪は俺の姿を見て 驚いていた           『どうしたぃ?あんまり小さくて 拍子抜けしたのかよ?』 俺が言った
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