犬神の誇り

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阿豪が言った     『いぇ……大変お強い方だと伺ってましたし 阿形とは 兄弟同然と……』 『だから 虎か竜でも 出てくるかと 思っていたのかい?』 『はいっ♪』           この小僧 臆面も無く「ハイ」と 答えやがった             器がデカイのか それとも馬鹿なのか                 『話しは おおよそ 聞き及んでおります  その狛犬 多分に 一族の逸れ者でありましょう 一族の問題は 一族が片を付けます ご安心下さい』              どうやら 前者のようだ にしても 爺さんは まだ 吽獄の事を 話していない様子なのに コイツは 端から「一族の者の仕業」と 読んでいたらしい             尊敬に値する洞察力だ            『して阿豪よ… だとして どうするか?』               爺さんの問いに 少し置いて 阿豪が答える    『はぃ…… 私が参りましょう…… コレをおさめれば 吽鎧様に対する非難も消えましょう』    『ワシにではなく 阿豪 主に対しての非難じゃ』『なれば 尚の事』              余程の自信があるのか 俺の「風牙」さえ はねのけた あの 狛犬達を 簡単に「納める」と 言って除けた         『ミダスさん… そんなに不思議な 事では無いんですよ』        何故 俺の腹が解ったのか           『木火土金水…… 五行は 必ずしも 完璧ではないんです この現代では…』            阿豪の話しは こうだった           狛犬は 本来 石を削って創られ それに 犬神が身を移す その時 石の特性が 身に備わる 従って 最近狛犬の職務を修めた者であれば 石ではなく コンクリートで 創られている為 五行が 通用しない           合点がいった……              ならば 俺にも やり様がある  勝てる    『ヤルなら 月夜にしてくれねぇかなぁ 力が使えるからな』      阿豪は 黙っていた……            口許が 怪しく歪んだのを俺は 見逃さなかった
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