紅葉映ゆる頃

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涙が溢れた。 何故かは未春自身にも明確ではなくて。 けれどそれが決して負の感情から来るのではない事を分かっていて。 「そぉ…じっ…」 初めて、彼に縋り付いた。 沖田の体温を求めて。 沖田も、そっと力を込めて返した。 「今夜僕が此処に来たのは、貴女に呼ばれた気がしたからです」 泣きじゃくる未春に言い聞かせるように、沖田は言葉を紡ぐ。 「刀の手入れも終わり、さて床につこうかと思った所で、本当に何気なく縁側に出たんですよ」 肩にほとほとと落ちる雫の一つひとつを感じながら、目を細める。 「そしたら、月が寂しそうで。そんな事を思ったら、急に未春の声が聞こえた気がしたんです」 ねぇ…と、肩を少しだけ離して、顔を覗き込む。 「貴女が僕を呼んだ気がしたんです。勘違いでは…ありませんでしたか?」 「…ぅ…っ…」 こくこく、と声にならないまま頷く未春。 沖田は安心した様に「よかった…」とその額に口づけた。  
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