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「ねぇ未春?」
一つ息を吐いた後、総司が未春を呼んだ。
「僕は侍で、いつ命を落とすやも知れない身の上です。」
腰の大小に触れながら噛み締めるように呟く。
「だから、今まで大切な人は作らないようにしてきたんです。僕にもしもの事があった時、残される側の人はとてつもなく辛いでしょうから。」
でも…ともう一度未春の身体を抱き締める。
そうすると未春の耳が丁度総司の心臓に重なる為に、その鼓動の速さがわかる。
思わず力を込めた足下で、落ち葉がかさりと音をたてた。
「でも、もう限界なんです。」
「総司…?」
「いずれ貴女を悲しませると、苦しめると、わかっているのに…僕は貴女をこのまま離したくない。」
合わせられた瞳の強さが
「僕は貴女を…未春を愛しています」
慈しむように添えられた指が
「貴女を奪っても良いですか?」
未春の全ての感覚を拐っていった
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