緑萌ゆる頃に

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地面や木々を覆う新緑が、ようやく吹いてきた南からの風に撫でられて行く。 総司と未春は今は若い緑に色付いたあの桜並木の丘で、仰向けに並んで寝転んでいた。 あの出逢いから幾度となく逢瀬を重ねた2人はいつしか…まるで生まれてからの知り合いのように寄り添うようになっていた。 「…なんで空は青い…?」 未春はそんな疑問と共に隣の総司を振り返る。 未春は時々こんな突拍子もない疑問を何の前フリもなく総司に投げ掛ける。 始めこそ「どういう意味か、何かの比喩なのか」と悩んだ総司も今は慣れたもので、彼女の『純粋な疑問』に一緒になって考え込む。 「…なんででしょうね…?」 総司の呟きに苦笑して、未春はまた空を仰いだ。 「空の上には…宇宙があって…宇宙の上には…何がある…?」 今度は空を向いたまま、未春が口にした言葉。 「…宇宙がずっとずっと続いてるんですよ」 大して考えもせず口をついて出た言葉に 「じゃぁ…宇宙の終わりには?」 更に疑問を投げかけられる。 「何も…ない…?」 何故か不安そうな瞳で、総司を見る未春。 その瞳があまりに頼りなく揺れていたから… 「…神様の世界…ですかね?」 総司はガラにもなく、そんな事を言ってしまった。 未春は一瞬驚いたような顔をして… 「総司がそんなコト言うなんて…」 それから… 「めずらしい」 華のように微笑った。 『あぁ…夏の桜…』 総司はそう思った。 そして 『護りたい…この笑顔を…』 そう…強く願った。  
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